出産を無事に終えてほっと一息。
かわいい我が子と、一生懸命働いてくれる夫がいてくれて、幸せの一つのピークが出産直後です。
しかし、育児は精神的にも身体的にも負担がかかるもの。
また、出産費用や育児用品の購入など、出産後にかかる金銭面も大きくなります。
この負担を少しでも軽くするために、育休を取得した場合に社会保険料の免除を受けられる制度が存在します。
もちろん男性が育休を取得した場合でも、この制度は適用されます。
育休を取得した月の社会保険料は免除となり、およそ5万円(ボーナス月はおよそ18万円)の支払いが免除となります(月給が40万円程度の場合)。
ただし、1ヶ月未満の育休取得の場合、社会保険料の免除を受けるために条件があります。
今回はその条件についてまとめてみました。
育休を取得すると社会保険料が免除になる
社会保険料とは、健康保険料と厚生年金保険料のことを指します。
会社員の方は給料明細を見てみると、健康保険料と年金保険料が毎月支払われているのが分かると思います。
育休を取得すると、この健康保険料と年金保険料が免除になります。
この制度の特徴として、社会保険料の免除は月単位で、日割り計算はしないことがあげられます。
1ヶ月未満の育休でも1か月分の社会保険料が免除になる可能性があります。
育休で社会保険料が免除になる期間
月単位で行われる社会保険料の免除。
どのような仕組みで免除になるのかは、日本年金機構のHPに記述があります。
ここでは、大事なところをかいつまんで引用してみます。
【育児休業保険料免除制度】
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも徴収しません。
保険料の徴収が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月までです。
日本年金機構のHPより引用
ここで大事なポイントは以下のふたつ。
- 育休開始月の社会保険料1ヶ月分は免除対象となる
- 育休終了日の次の日の月は社会保険料は免除されない
特に大事なのは1つ目。
育休を開始する月の社会保険料は、丸ごと1ヶ月分が免除対象になります。
ただし、2つめのポイントも非常に重要で、育児休業の次の日、つまり会社に復帰した月の社会保険料は免除されません。
つまり、育休開始と同じ月に職場復帰した場合は、社会保険料の免除がされなくなってしまうのです。
このことから、社会保険料の免除を受けるためには、月末の営業日を育休の期間に入れる必要があります。
ポイントはたった一つなので覚えておいてください。
月末日を育休の期間に含めることを忘れないようにすることです。
月末日を踏むように育休を取ろう。
この件について、自社の担当部署に確認しました。
Q:月末日を踏まずに育休を取った場合は社会保険料免除になる?
A:なりません。月末日を育休に含めた場合のみです。
日本における男性の育児休業はまだあまり浸透しておらず、1ヶ月以上の育休を取ることが難しい方も多くいらっしゃいます。
1ヶ月以上の育休取得が難しい場合は、最低でも月末の営業日を育休期間に含めるようにしましょう。
同じ期間育休を取ったとしても、取得する期間によって社会保険料の免除が受けられたり受けられなかったりします。
また、1か月以上の育休を取るなら、以下のようになります。
例えば、6月30日から7月31日まで育休を取ったとします。
この場合、6月に育休を開始したので、1つ目のポイントから6月分の社会保険料は免除。
さらに、7月31の次の日は8月1日なので、2つ目のポイントが当てはまり7月分の社会保険料も免除になります。
これ以降は、8月31日まで育休を取れば6~8月分の社会保険料が免除になり、それが続きます。
つまり、「育休は月末稼働日を踏むように期間設定する」こということは忘れないようにしてください。
このルールを知らないがために、育休を取ったのに社会保険料の免除を受けられなかったという声も、よく耳にします。
お子さんが生まれた際の基本的な知識になりますので、しっかりと覚えておきたいところです。
夫が育休を取ることで節約できるお金の目安
皆さんは、ご自身が支払っている社会保険料の額を把握していますか?
せっかく育休を取るのだから、具体的な金額を出してみたいと思います。
1月の給与が40万円程度のサラリーマンの方の社会保険料の内訳はおおよそ以下のような感じです。
- 健康保険料:約10,000円
- 年金保険料:約40,000円
1か月分の社会保険料が免除になるので、合わせて約50,000円が免除になることになります。
また、ボーナス時に支払う社会保険料は、ボーナスの収入にかかってきますので、いつもよりも多いものとなってきます。
ですので、ボーナス支払い時の社会保険料も、育休を取れば免除になります。
ボーナスの支払い時の社会保険料の内訳は、以下のような金額になります。
(この例のボーナスは給料6か月分で計算していますので、会社によって金額は異なってきます)
- 健康保険料:約30,000円
- 年金保険料:約100,000円
ボーナス時の社会保険料約130,000円も免除になるわけです。
そうなると、ボーナス月の社会保険料免除額は、毎月分と合わせて約180,000円になります!
この例は目安ではありますが、1か月の給料の半分くらいの金額が支払い免除額になります。
ちなみに「どのような形でお金が返ってくるの?」というお問い合わせもいただきました。
こちらについては、会社によると思います。
- 育休を取った月の給与(賞与)から免除額をプラスしてくれる
- 育休を取ったことを確認して次月以降の給与から社会保険料を差し引かない
- 年末調整で免除額分を還付する
のいずれかになりそうです。
法律では「免除分を納めてしまったら次月以降の社会保険料を免除する(免除相当分に達するまで)」となっていますが、これはあくまで会社が年金を納める時のルール。
給与の支給方法は会社が決めることなので、会社に問い合わせるしかありません。
育休を取得できる期間
夫が育休を取ることができる期間は、お子さんが生まれた日から1歳になる前日までの好きな期間です。
※妻は出産をすると8週間の産後休業期間に入り、育休が取れるのはその後からお子さんが1歳になる前日までの好きな期間です。
そして、下に書いたような事情があれば、育休の期間をお子さんが1歳6か月になるまでに延長することができます。
- 保育所への入所を希望しているが入所できない場合
- 配偶者の死亡や病気、ケガなどで子どもの養育が困難になった場合
社会保険料が免除となる月を頭に入れながら、夫婦でよく話し合って育休期間を決めたいところです。
夫が育休を取れるかどうかは会社次第
夫が育休を取れるかどうかは、勤めている会社によるところが大きいです。
育休取得により、会社での評価が変わることはあってはならないと法律では決められています。
しかし、会社の評価は会社の人間が決めるもの。
評価が落ちても、育休が原因でないと言われれば、それを証明する手段はありません。
この件でいろいろ裁判なども行われていますが、会社が人事評価に対するボールを握っているのは間違いありません。
会社の倫理観、公正な評価が試されるところです。
育休取得に対して、ひとつ追い風となるのは「くるみん認定」です。
育休取得率など、子育て支援に関する計画を立て、それを達成した企業は厚生労働大臣のくるみん認定を受けることができます。
要するに「子育てに対してしっかりとケアができている会社」ということを世間にアピールできるようになるわけです。
これを目的として、育休取得を推進する会社も増えてきていますね。
最近ネットニュースで、「上司に男性の育休取得をすすめられて、育休が明けたらすぐに転勤命令が出た」という記事も読みました。
残念ですが、転勤や異動の命令は会社は自由に出すことができます。
このニュース、育休推進をあらかじめ会社側が転勤指示目的にしていたのであれば、かなり悪質です。
ですが、法律的には問題ないのです。
まだまだ日本の会社の育休に対する理解は浅いと言えるので、ご自身・ご主人の会社の風土をしっかりと把握して、育休取得を考えられるのがいいと思います。
夫の収入減に対しては育児休業給付金を受給しよう
1か月以上の単位で育休を取るなら、給与収入の減少が気になるところ。
これを補填するのが、育児休業給付金です。
育児休業給付金を受け取るための条件は、以下の通り。
- 育休開始する日より2年以内に賃金支払基礎日数11日以上ある月が12か月以上
- 育休中に就業する場合、1か月に働いている日数が10日(10日を超える場合は80時間)以下
- 育休期間中の各1か月ごとに休業開始前の1か月あたりの賃金の80%以上の賃金が支払われていない
分かりづらいのでかみ砕いて説明します。
1つ目のポイントから、最低一年間は会社で働いていること、が条件になります。
入社1年目は給付金を受け取ることができないわけですね。(前職やアルバイトで働いていた場合は別です)
さらに、2つ目のポイントからは、育休中に就業する場合に、1か月約30日のうち20日以上を育休で休んでいないと受け取ることができないということになります。
ここで言う1か月とは、給料日から給料日までです。
つまり、育休中に出社して働く必要がある場合、一つ前の給料日から次の給料日までの間に働く日数を10日以下にする必要があります。
どうしても10日を超える日数出社しなければいけない場合は、労働時間が80時間を超えないようにしましょう。
3つ目のポイントは、育休中の給料が日割り計算なら、2つ目のポイントをクリアしている時点でほぼだいじょうぶ。
育休中の給料を日割り計算で計算する場合、2つ目のポイントで3分の2を休むと、給料は3分の1になっているはずですから、80%を大きく下回ります。
そして気になる給付額は、ざっくり月給の3分の2が目安。
これで家計が回っていくかをしっかりと確認しておいてください。
長期の育休を考えるなら、育児休業給付金はぜひ受給したいところ。
しっかりとポイントを押さえておきましょう。
- 働いて2年目以降
- 育休中に働く場合、給料日から給料日の間で働く日が月10日以下(もしくは80時間以内)となるように調整する
育休取得のポイント
育休を取る際には、社会保険料の免除を受けられるように、必ず月末営業日が育休期間に入るように育休の期間を調整しましょう。
たとえば月の真ん中の2週間だけ取得した場合は、社会保険料は免除になりません。
また、長期間の育休を取れる場合は、その期間中に出社しなければならないかどうかが一つポイント。
出社する必要がある場合は、育児休業給付金をもらえる条件を満たすように、給料日から給料日までの間で、月10日以上働かないように注意してください。
この2点に気をつけて、うまく会社と調整してください。
最後に
この記事では、育休の社会保険料免除の条件について紹介しました。
パパの育休の本来の目的は、ママの子育てを手伝うことです。
ですので、長期間休みを取れるのであれば、育休は長い方がいいと僕は考えています。
ただ、日本の文化として1ヶ月以上に渡る長期の育休取得は、日本では難しい側面があることは事実です。
政治家の小泉進次郎氏も育休は実質12日分しか取得していません。(厳密には僕たちが取得する育休とは違うものですが)
ここは日本の考え方が変わっていかなければいけない大きなポイントの一つだと思います。
長期間の育休取得が難しい場合は、1ヶ月未満の育休取得の際の社会保険料免除の条件は知っておきましょう。
また、ママの記憶に残るのは「パパが子どものために会社と仕事を調整して休んで助けてくれたこと」です。
そのあたりを頭の片隅に残して、いつからいつまでなら育休を取れるか、取ってもらうのか、よく考えていただくきっかけになっていれば嬉しく思います。